942 (1984) "Doctor's Car"


1984年、フェリー・ポルシェ 75歳の誕生日のために 928をベースにワンオフで製作された 942は、数あるスペシャル・ポルシェの中でも異彩を放つ特別の一台です。約 25cm延長されたホイール・ベースにより、2ドアながら後部座席の居住性が十分に確保されているほか、空力を意識したデザインの前後バンパーや当時としては珍しいプロジェクター・ヘッドランプの採用により、ベースとなった928と比べるとかなり印象の異なる顔つきになっています。また、水冷 V8エンジンは市販型の 928より強力な 310馬力を発生する 5リッター 32バルブのユニットが搭載されていました。

実験車両的な意味合いが強い 942では、丸みを帯びた新型の前後のパンバーや 300馬力を発生する 5リッター 32バルブのエンジンが試され、それらは2年後には早くも市販型の 928に採用されています。プロジェクター・ヘッドランプについては時代をかなり先取りしており、約 10年後の 993でようやく装備されています。フル4シーターのスポーツカーを本気で計画していたポルシェは、942の製作から 3年、1987年に同じく 928ベースの4ドアモデルを試作していますが、残念ながら市販されることはありませんでした。


この作品はフジミ (Fujimi) 1/24のキットを改造したものです。シンプルな構造のフジミのキットは部品数も少なく改造のベースには最適です。Bピラーの後側でホイールベースを 10mmほど延長し、自作のパーツで「ドクターズ・カー」もしくは「928/4」などとして知られる 942に仕上げてみました。ツッフェンハウゼンのプロトタイプ部門がフェリー・ポルシェのために7ヶ月を費やして仕立てたこの 928のスペシャルには、彼のお気に入りだったダーク・グリーン・メタリックのボディ色に加え、自動車電話と豪華なオーディオ・システムが装備されています。